【最新17話更新】「大蛇に嫁いだ娘」のネタバレ付きあらすじと感想まとめ

村に帰郷するミヨに大蛇が同行！？

新たな訪問者は、ミヨの弟・渉でした。
彼は、ミヨを自分たちの元に返して欲しいと大蛇にお願いするためにやって来たようです。

ミヨは、今の自分は幸せであることを弟に告げます。姉が大蛇に酷い仕打ちを受けていると思っていた弟は、それを聞いて驚きました。

ミヨは大蛇の元から去るつもりはありませんでしたが、家族と再会したい気持ちがあるのも事実でした。

そのためミヨは、必ず山に戻ることを大蛇に約束し、一度自分の村へ帰りたいと申し出ます。

それに対して大蛇は、自分もミヨの帰郷に同行すると申し出てきて……！？

大蛇のミヨに対する独占欲と優しさ

今回、自分も人里に降りてミヨの帰郷に同行するという、予想外すぎる提案をしてきた大蛇。

妻の実家に夫が挨拶しにいくのは自然なことだと大蛇は言いますが、夫が人外のバケモノの場合は話が別な気もします……。大蛇は人間嫌いを公言してはいるものの、どこか自分を人間臭く仕立てたい節があるような気もしました。

大蛇がミヨの帰郷に同行すると言い出した理由についてですが、おそらく「妻の実家に夫が挨拶」というのは建て前でしょう。大蛇は本音では、ミヨがこのまま山に戻ってこないのを恐れているのではないかと思います。

しかしミヨの願いを叶えたいために、自らがミヨを村に送り迎えしてやろうと言い出したのではないでしょうか。今回の帰郷は、大蛇のミヨに対する独占欲と優しさが入り混じった、複雑な思いの末の行動なのだなと感じました。

ちなみに人の足だと数日かかる道のりも、大蛇がミヨと弟を背中に乗せてあっという間に帰郷を果たします。

大蛇の人間に対する複雑すぎる想い

大蛇はもともと人間とうまくやっていた過去がありますが、とある僧侶のせいでその関係は打ち砕かれ、大蛇は逆に人間たちから酷い仕打ちを受けた上に、人との関りを断ってしまった苦い過去もあります。

人間から受けた裏切りと暴力と拒絶は、大蛇の心に大きなトラウマを作りました。さらに、キヌという女性の影響から、「誰かと共に生きる」ことで得る心の安寧を知ってしまった大蛇は、孤独や寂しさといった感情も人間から学んでしまいます。

大蛇にとって人間は、トラウマではありますが、同時に執着の対象でもあるのです。

今回、そんな複雑すぎる想いを抱く相手である人間たちがひしめき合う下界に、自ら降りて行った大蛇。彼が下界に降りることは傍から見れば造作もない行為に見えますが、実は相当な勇気が必要な行為だったのです。

大蛇が自らミヨの村に出向くなんて、驚きの展開でした！

こんなにあっさり下山できるのなら、頻繁にミヨを連れて村を訪れれば、人間たちとの確執も解消できるような気がしますが……どうやらそう簡単な話ではないようです。

そもそも大蛇はそうやって人間と良好な関係を築いていた中で、人間側からの裏切りを受けているんですよね。過去の苦い経験をまた繰り返さないために、大蛇は自分の身を守るために人間を避けて生きている節が見受けられます。

そんな中ミヨの帰郷を手伝ったのは、まさに大蛇の優しさと思いやりからなる行動なのだなと感じました。

大蛇VS若い僧侶の戦いは、あっという間に決着がつく

シーンは大蛇の過去編から現代編へともどります。

ミヨと幸せな生活を送っていた大蛇の前に現れたのは、師の仇を討とうとする若い僧侶でした。しかし過去編で、実は大蛇はこの若い僧侶の師を喰っていないことが明らかになっています。

そうとは知らない若い僧侶は、目の前の大蛇が師の仇であると信じて疑わず、刃物を振りかざしてきました。

ミヨはそれを身を挺して守ろうとします。ミヨに宥められて、大蛇は若い僧侶とやりあう気を失い、彼女を連れて自分の家へと帰っていきました。若い僧侶は大蛇の大口に脅されて身動きが取れなり、その場に座り込んだまま去っていく大蛇を見つめることしかできません。

家についた大蛇は、先程の恐ろしい気迫が消え失せており、いつもの優しい大蛇に戻っています。一件落着と思いきや、山にはまた新たな訪問者が来ているようで……？

人間を喰うことが大蛇の愛情表現？

今話の最後には、ミヨが自分もいつかは大蛇に喰われるのかと疑問を抱き、つい大蛇にそのことを尋ねてしまうシーンがあります。ミヨの質問に対して大蛇は全否定をした後、喰う以外の方法でミヨに愛を伝えたいのだと語っていました。

大蛇の中では明らかにキヌとミヨの存在が被っています。更に、喰う以外の方法で愛を伝えるという発言があったことから、キヌを喰ったことが大蛇なりの愛情表現だったことも明らかになりましたね。

大蛇はキヌを喰ったことを後悔している？

しかしその愛情表現は、愛情よりも独占欲に近いものがある感じがします。作中でも大蛇は、キヌを喰ってしまったことを心のどこかで後悔している節がありました。

大蛇は、キヌと一緒にいることで、人と一緒にいる心地よさを知ってしまいました。さらに、独りぼっちの寂しさにも気付いてしまったのです。

ミヨがキヌの代わりというわけではありませんが、大蛇は確実にキヌとミヨの存在を重ねて見ています。喰う以外の愛情表現がしたいと言ってミヨを大事にする大蛇は、おそらくキヌにしてやれなかった愛の伝え方をミヨにすることで、自分の後悔や罪悪感を無意識的に和らげようとしているのではないでしょうか。

大蛇に嫁いだ娘・第16話の考察

ストーリーが過去編から現代編にもどりました。大蛇の生い立ちや暗い過去などが垣間見えて、今の大蛇を見る目がかなり変った気がします。

しかし見る目が変ったのは読者だけなんですよね。ミヨは大蛇の過去をたいして知らないため、大蛇が何を思ってミヨのことを大切にしているのかもいまいちわかっていないと思います。

それでも大蛇と共に生きる決心をしたミヨは、もしかしたら無意識的に他者の心に寄り添える不思議な力があるのかもしれませんね。

黒蛇と人間の少女・キヌの奇妙な関係は続きます。

キヌは、その後も黒蛇の住処の沼をしばしば訪れていました。

最初はキヌを拒絶していた黒蛇でしたが、今はもうキヌを追い出す気も湧かず、むしろ彼女のことを受け入れ始めています。

黒蛇は、人間なんかと関り続ければ、どうせこの先ろくでもないことが起こるに違いないと分かっていました。
しかし、それでもキヌとの関係を断ち切ることはできなかったのです。

キヌは、売春の仕事を続けています。
体を張っているにもかかわらず、キヌに支払われるのは銭ではなく握り飯2つです。

さらにキヌは夜な夜な、身を寄せている寺の坊主にまで抱かれるようになっていました。

キヌの心は、少しずつ蝕まれていきます。

大蛇は狩りの途中でしたが、どうにも最近はうまくいかない様子です。
獲物の鹿には逃げられ、そのくせ息は上がり体も重たく感じる大蛇。

そこへキヌがやってきました。
"互いにご飯を食べるのに苦労をするね。"と話しかけてきます。

大蛇はキヌの体臭から、彼女が仕事帰りであることを悟りました。

キヌは、夜になっても寺に帰りませんでした。
家で寝るように促す大蛇ですが、キヌは坊さんと一緒に居たくないと言ってなかなか帰りません。

2人は時折そんな会話をポツリポツリとしながら、ただただ夜空を一緒に眺めていました。

ある日いつものようにキヌが大蛇の元を訪れますが、今日はキヌの様子がいつもと違いました。 彼女は顔に怪我をしていたのです。

聞けば、客の男に首を絞められながら行為を迫られたとのこと。
客の男は、首を絞めると穴が締まるという理由で首を絞めてきたそうです。

キヌは悟りました。
今回は助かったけれど、きっと自分はいつかこんなつまらない理由で命を奪われるのだろう、と。

彼女はすでに生きる気力を失くしています。

大蛇は、他の誰かに殺されるくらいなら自分がキヌを食ってやると言い出しました。
キヌは、微笑みながらその申し出を受け入れます。

大蛇に締めあげられて丸飲みにされたキヌは、不思議と腹の中でしばらく生きていました。

大蛇の体は冷たかったけれど、腹の中は温かいと話すキヌ。
"母親とは、こんな感じなのか？"と尋ねますが、大蛇がそんなこと知る由もありません。

キヌが大蛇に食われたことを知った坊主は、大蛇に呪いをかけました。
それは3日3晩寝ずに行う祈祷による呪いです。

大蛇は苦しみますが、そんな最中あの坊主がかつて神とあがめられていた自分を貶めたあの坊主であることを知るのでした。

大蛇は坊主のもとを訪れます。
そしてキヌは、自分の体の一部となって連れて行くと宣言しました。
キヌが選んだのは身売りをさせる坊主なんかではなく、大蛇である自分だったと声高らかに吠えてきました。

坊主は絶望の表情で床に崩れ落ちます。
実はこの老いた坊主もまた、キヌに恋をしていたのです。

大蛇は、この地を去ることにしました。
川を下りながら、キヌに語りかけつつ移動をする大蛇。

しかし、腹の中のキヌはもう返事をしてくれません。

直後、大蛇の体を落雷が直撃します。
そのせいで大蛇は、呆気なく命を落としてしまいました。

大蛇の肉が腐りはじめ、骨がむき出しになる頃。
大蛇の巨大な体を突き破って、小さな白い蛇が出てきました。

白い蛇は、"昔の私は随分哀れな一生を送ったようだ。"と呟き、自らの古い体に別れを告げて藪の中に消えていきます。

大蛇は不死鳥みたいな感じで体が古くなったら生まれ変わって永遠を生きながらえている生き物だったみたいです。ということはやっぱりこの大蛇は本当に神様の類だったのかもしれませんね。

丸のみにされたキヌが長いこと大蛇の腹の中で生きながらえていたのも、大蛇がただの蛇ではないためだったのかもしれません。

これまで大蛇の正体についてかなり謎につつまれたままでしたが、この過去編でキヌとのやりとりを通して、大蛇がどのようにして人を愛し憎み絶望したのかがよく理解できました。

ミヨもいざ命を落とす間際になったら大蛇に丸飲みにされる運命にあるのかもしれませんね。

大蛇がまだ若く、体も黒かった頃。

彼は、大きな桜の木がある池を根城にしていました。
大蛇が冬眠から目覚めると、ある日自分のお気に入りのその場所で、見知らぬ人間の女が居眠りをしているのを目撃します。

女は決してお淑やかとは言い難く、不躾で身なりも貧相な女でした。

大蛇はすぐに女を追い返そうと脅します。
しかし彼女は脅しに屈することなく、むしろ蛇よりも怖いものなんてこの世の中には腐るほどあると大蛇をおちょくってきます。

彼女はどこか悪戯な笑みを浮かべて、明日もまた来ると言い残して去って行ってしまいました。

女は翌日も池に現れました。
大蛇は例のごとく彼女を追い返そうとしますが、ここで女は身の上話をしてきます。

なんでも彼女には身内がおらず、ずっと寺の住職の世話になっているのだとか。
少女が雨風は凌げるから感謝はしているとボヤくあたり、彼女はどうもあまりいい生活を送っているようではありませんでした。

大蛇はなぜか「住職」と聞いただけで気分を害したのか、池の奥に引っ込んでしまいます。

大蛇は、住職や僧侶といった人間が大嫌いでした。

実は彼はもともと村に雨をもたらす神として祭られていたのですが、ある旅の僧侶が干ばつが起きたのは大蛇のせいだと村人を唆し、大蛇を退治するように勧めてきたことがあったのです。

大蛇は村人に討伐されましたが、実は生きながらえていました。
人間に裏切られるのは、これが初めてではなかった大蛇。

そのため彼は、僧侶のせいで人間不信に陥っていたのでした。
しかし不思議と人間への憎悪を抱くと、決まってあの女の顔が浮かんでくるようになります。

女の純粋さと逞しさは、大蛇の心に少しずつ変化をもたらし始めています。

ある日いつものように池を訪れた女が、熱を出していることに気が付いた大蛇。
彼は野生の動物から女を守るために、自分の体で彼女を囲うようにとぐろを巻きました。

女は、寺に帰りたくないとボヤきます。 実は彼女がやらされていた仕事は……身売りの仕事だったのです。

彼女は、自分の名前をキヌだと教えてくれました。
しばらくしてキヌは、大蛇に別れと礼を告げて寺へと帰っていきます。

その晩、どうしてもキヌのことが気になって仕方がない大蛇は、彼女に会いたい一心を抑えることができずに寺へと赴いてしまうのでした。

大蛇の過去に大きく関係のある女性・キヌ。 大蛇が大の僧侶嫌いであることから考えるに、おそらくキヌは僧侶の手によってひどい仕打ちを受けていたか、もしくは命を奪われたか……それくらいの悲惨な過去があってもおかしくはないですよね。

ミヨと大蛇が住まう山を、ある一人の僧侶が訪れます。
何やら只ならぬ事情がある様子の僧侶。

僧侶が山に入って行くのに気が付いた山の神社の坊主は、山には大蛇がいるからこれ以上先には進まない方がいいと忠告を発します。

しかし僧侶は、"自分はその大蛇に用事があって山を訪れたのだ。"と言い、坊主の忠告を聞かずに山の奥へと進んでいってしまうのでした。

ほどなくして僧侶は狼に襲われてしまいます。

一方、ミヨは山菜を取りに外へ出ていました。タヌキの八兵衛が一緒にいます。

八兵衛は、ミヨと大蛇が体を重ねたことを指摘してきました。どうやら八兵衛はそういうことを匂いで察知することができるようです。

ミヨは恥ずかしがりながら、八兵衛のことを変態呼ばわりしました。 ミヨはすっかり大蛇と恋に落ちている様子です。しかし八兵衛はそんなミヨに忠告を発します。

恋愛というものは最初は相手がよく見えるもの。大事なのは良くない面が見えてきた時に、夫婦としてどう乗り越えるか。

同種の夫婦ですら仲違いをすることがあるのに、ましてやミヨと大蛇は種族すら違うのです。八兵衛は、愛が冷めた時こそが地獄だとミヨに重ねて忠告を発します。

しかしミヨは、自分たちに限ってそんな心配は必要ないだろうと考えてしまうのでした。

帰路につくミヨですが、途中で倒れている僧侶と遭遇します。ミヨは大蛇が僧侶を嫌っていることを思い出し、とりあえず彼を山小屋に連れて行き看病をすることに。

僧侶は傷にうなされながら、"殺す……。"と意味深な言葉をボソリと呟くのでした。
どうやら彼はこの山にいる何かに、復讐を果たすためにやってきたようです……。

その翌日も山小屋で僧侶の看病をしようとするミヨ。

しかしミヨから別の人間の匂いがすることに気が付いた大蛇は、こっそりとミヨの後をつけてきており、怪我をした僧侶はあっさりと見つかってしまいます。 "なぜ僧侶の存在を黙っていたのか。"
そうミヨに問い詰める大蛇。

すると僧侶は、大蛇に対して自分の師匠を殺しただろうと質問。 どうやら彼は、その師匠の敵討ちをするためにこの山に入ったようです。

大蛇はいつもの穏やかな雰囲気とは打って変わってバケモノのようなオーラを発しながら、自分は僧侶嫌いだから食ったことがあったかもしれないなと言い出します。

大蛇が人を喰った可能性があることを知ったミヨの中では、大蛇が恐ろしい怪物のように思えてしまい……ミヨは八兵衛の言葉を思い出すのでした。

幸せの只中にいたミヨと大蛇でしたが、思わぬ展開となりました。ミヨの目の前でバケモノ全開の大蛇もちょっと迂闊すぎる気がしますが……なんでしょう、性（さが）なんですかねぇ。果たして大蛇はこの僧侶の師匠を本当に食べてしまっているのでしょうか。なぜ大蛇が僧侶嫌いなのかももっと詳しく知りたいですし、大蛇の過去に興味がでてきましたね。

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